専門ジャーナリスト協会倫理綱領1(1987)

専門ジャーナリスト協会は、ジャーナリストの義務は真理に奉仕すること(serve the truth)であると信じる。

マス・コミュニケーションの各機関(agencies)は公共的議論と公共的情報(public discussion and information)の運び手であり、事実を知り、報告するというマス・コミュニケーション各機関に対してアメリカ合衆国憲法が命ずるとともに保証する自由(their Constitutional mandate and freedom)に基づいて行動することをわれわれは信じる。

公衆が啓蒙されることが正義の実現に先立って本質的であるということ(public enlightenment as the forerunner of justice)、そして、真理を求めるという憲法によって保証されたわれわれの役割が真理を知るという公衆の権利の一部をなすということをわれわれは信じる。

これらの責任(responsibi1ities)を持つことは、ジャーナリストが知性(intelligence)、客観性(objectivity)、正確さ(accuracy)、公正さ(fairness)をもって行動するように要請する責務(ob1igation)をもたらすとわれわれは信じる。 以上の目的のために、以下に提示される実践の基準(the standards of practice)を受け入れることをわれわれは宣言する。

I. 責任(Responsibility)

公共的に重要であり、公共的関心の対象となる出来事(events)を公衆が知る権利は、マスメディアがなにごとにも増して実現するべき使命(mission)である。ニュース(news)および啓蒙された意見(enlightened opinion)を普及する(distribute)ことは、社会全体の福祉に奉仕することにほかならない。利己的動機またはその他の不適当な(unworthy)動機ゆえに公衆の代表としての専門的地位を利用するジャーナリストは、高度の信頼(high trust)に抵触することになる。

II. 言論の自由(Freedom of the Press)

言論の自由は、自由な社会における人々の奪うことができない(inalienable)の権利として守られなければならない。その自由にともなってもたらされるものは、われわれの政府および公共的あるいは私的組織(public or private institutions)の行動と発言(actions and utterances)について議論(discuss)し、疑義を呈し(question)、批判する(challenge)自由である。ジャーナリストは、一般には支持されない意見を述べる権利と、大多数に合意する特権を支持する(uphold)。

III. 倫理(Ethics)

ジャーナリストは、真理を知るという公衆の権利以外の利益に対する責務から自由でなければならない。

  1. 贈答品(gifts)、利益供与(favor)、無料の旅行(free travel)、特別の扱い(special treatment)、あるいはさまざまな特典(privileges)は、ジャーナリストとその雇用者の誠実性(integrity)を傷つける(compromise)ものである。価値をもついかなるものも受け取ってはならない。
  2. アルバイト(secondary employment)、政治的関与(political involvement)、公職への就任(holding public office)、そして、地域社会における奉仕(service in community organizations)は、それがジャーナリストとその雇用者の誠実性(integrity)を傷つけるものであるときには、避けるべきである。ジャーナリストとその雇用者は、自分たちが実質的(real)なものであれ、表面上(apparent)のものであれ、利益の葛藤(conflict of interest)から免れるように個人的な生活を送るべきである。公衆に対する責任こそが卓越する。それこそが、ジャーナリストという専門職種の本性である。
  3. いわゆる私的なニュースソースからのニュース伝達(news communications for private sources)は、ニュースとしての価値を持つという主張の実質化(substantiation)なしに公表されたり、放送されるべきではない。
  4. ジャーナリストは、さまざまな障害にもかかわらず、公衆の利益に供せられるニュースを求めようとするものである。公衆の関心事が公共の場で実施され、公共的記録が公衆の査察(inspection)に開かれているということを保証するために、ジャーナリストは、恒常的努力を続けるものである。
  5. ジャーナリストは、秘密(confidential)の情報源を守るというニュース報道者の倫理を承認する。
  6. 剽窃(plagiarism)は、不正直(dishonest)であり、受容不可能(unacceptab1e)である。

IV. 正確さと客観性

公衆に信頼を置くこと(good faith with the public)は、すべての価値あるジャーナリズムの基礎である。

  1. 真理は究極の目標である。
  2. ニュース報道における客観性は、経験ある専門家であることの徴表(mark)として役立つまた別の目標である。客観性は、われわれが達成に向けて努力する基準(standard of performance)である。われわれは、その目標に到達するものを讃える。
  3. 不正確さ(inaccuracy)や徹底性の欠如(lack of thoroughness)について言い訳はできない。
  4. 新聞の見出し(newspaper headlines)は、それにともなう記事の内容によって完全に根拠づけられる(warranted)ものでなければならない。写真とテレビ報道は、事件の正確な描像を提供するべきであり、事件を脈絡から離れて浮き上がらせるべきではない。
  5. 健全な実践(sound practice)は、ニュース報道(news reports)と意見表明(expressions of opinion)との間を明確に区別する。ニュース報道は、意見や偏見を交えることなく、問題のすべての側面を表現するべきである。
  6. それと知りつつも真理から隔たる社説(editorial comments)における党派性(partisanship)は、アメリカのジャーナリズムの精神に悖るものである。
  7. ジャーナリストは、公共的な事件や問題について、十分な情報に基づく分析、コメント、編集上の意見を提供する責任を認識している。ジャーナリストは、その能力、経験、判断力がそのような素材を提供することを保証する個人によってそのような素材を提示する責務を認める。
  8. 特別記事(special articles)、そして、個人弁護(advocacy)や筆者自身の結論や解釈をもっぱらの内容とする掲載物は、そのような性質のものであること明記(label)するべきである。

V. フェアプレイ(Fair Play)

いかなる時代のジャーナリストも、ニュースを収集し、提示する過程で出会う人々の尊厳、プライバシー、権利、福祉に対する敬意を示すものである。

  1. ニューズメディアは、評判や人格の道徳性に影響を及ぼす根拠のない攻撃(unofficial charge)を伝達するとき、攻撃されている側(the accused)に返答の機会を与えることなしにそれを行なうべきではない。
  2. ニューズメディアは、プライバシーへの個人の権利を侵害することに対して防御しなければならない。
  3. メディアは、悪徳(vice)や犯罪(crime)の細部に関する不健全な好奇心におもねるべきではない。
  4. 自己の誤謬について、即座かつ完全に訂正することはニュースメディアの義務である。
  5. ジャーナリズムは、その報道について公衆に対して説明可能(accountable)であるべきであり、公衆は、メディアに対する不満(grievances)を述べるように促されるべきである。われわれの読者と視聴者との開かれた対話を推進しなければならない。

VI. 誓い

この倫理綱領に従うことは、アメリカのジャーナリズムとアメリカの国民との相互の信頼と敬意という絆を保持し、強化するということを意図している。

専門ジャーナリスト協会は、教育プログラムその他の手段によって、この倫理綱領の主張を個々のジャーナリストが従うように促すべきであり、その従業員と協調してこの倫理綱領がその目的を推進する際のガイドラインとして働くようにする責任をジャーナリズム関連の出版物、放送番組が認識するように促すべきである。

(土屋俊訳)


1 Society of Professional Journalists: Code of Ethics


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Last modified: Wed Jan 12 16:54:10 JST 2000