Roger Crisp氏講演会のお知らせ
"Equality and Its Implications"(『平等とその含意』)
- 日時: 1999年9月13日(月)17時から19時
- 場所: 京都大学文学部新館二階第四講義室 (京阪本線出町柳駅から徒歩約10分)
- 講師: Roger Stephen Crisp (Fellow and Tutor in Philosophy, St. Anne's College, Oxford)
- 内容:
Crisp氏はこの講演で、最も説得力のある分配の平等の原理を発見し、この原理の背後にあってそれを説得力のあるものにしているもの
を検討し、その原理がどういう帰結をもたらすのかを考察します。彼はまず、平等自体を善とみなす平等主義[Egalitarianism]がデレ
ク・パーフィットのLevelling Down Objection[関係者全員の状況を同じ水準まで引き下げることも善いことになってしまう、という批
判]を受けること、この批判が説得的であることを説明します。そして、この説得力がWelfarism[誰かにとって善いものだけが善であ
る、という価値論]に依存することを指摘し、このWelfarismと矛盾することのない平等の原理を探究します。Crisp氏がその原理として
提示するのは、優先説 [The Priority View: utilityを分配する際には、最も暮し向きが悪い者を優先する]です。トマス・ネイグルの
議論を参考にしつつ、彼はこの原理を各存在者の別個性に基づけ、公正の徳[virtue]の概念と結びつけて擁護します。そのうえで、今日
の英米の倫理学で大問題になっている、動物の取り扱い、中絶、(可能的な)未来世代の善への配慮の問題に対してこの優先説を適用
し、その含意を検討します。
- 講師紹介:
Crisp氏は、Oxford大学のSt. Anne's Collegeで1988年に哲学の博士号を取り、現在はそこでFellowおよびTutorとして研究と教育に従事
されている若い哲学者です。関心は倫理学の幅広い分野にわたっています。徳倫理学、功利主義といった規範理論に関する論文と、生命
倫理学、環境倫理学、ビジネス倫理学といった応用倫理学に関する論文が多数あります。アリストテレス、ジョン・ステュアート・ミル
の研究者でもあり、後者についてはMill on Utilitarianism(Routledge, 1997)という著書や、詳細な注釈つきのUtilitarianismのテキ
スト(Oxford Philosophical Text, Clarendon P., 1998)を出しています。また、Oxford Readings in Philosophy SeriesのVirtue
Ethics(Oxford U.P., 1997)や、徳の理論・倫理学の論文集How Should One Live? Essays on Virtues (Oxford U.P. 1996)、Business
Ethics: Perspectives on the Practical Theory (Clarendon P., 1998)、Terrorism, Protest and Power (1990)の編者でもあります。
問い合わせ:
鈴木 真(京都大学文学部倫理学研究室)
606-8501 左京区吉田本町京都大学文学部倫理学研究室(新館八階818号室)
Tel.: 075-753-2440
E-mail: suzuki@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp
*出席に事前連絡は不要です。