2012年度 倫理学研究室の授業内容
講義
- 倫理学概論(2回生履修可能)
- 教授 水谷 雅彦
金曜3限。新3講(文学部校舎)
前半においては、現代の倫理学の基本的な理論を概説するとともに、行為とはなにかについて論じる。後期においてはいわゆる応用倫理学の各部門について概説するとともに、いくつかの事例について検討する。ただ、本シラバス執筆時から開講まで4ヶ月以上あるので、講義内容、計画は変更される可能性がある。実際の講義計画は初回の講義時に発表するので出席されたい。
特殊講義
- 会話の倫理学 III(大学院・学部共通)
- 教授 水谷 雅彦
火曜3限。新2講
本年度は会話や社交の概念に基づく倫理学の構築にあたって、それに対する批判的見解をもつであろう理論のいくつかを検討する。例としては、シャンタル・ムフの「闘技民主主義」やジャック・ デリダ晩年の「政治哲学」が考えられる。ただ本シラバス執筆時から開講まで3ヶ月以上あるため、 担当者のその間の研鑽により、予定が大幅に変更される可能性がある。実際の講義計画は、最初の 授業でお話しする。いずれにせよ、昨年度の講義を受講していない者にとっても、なんらかの予備 知識を要求するような講義にはしないつもりである。
- 市民という在り方と道徳(大学院・学部共通)
- 講師 亀喜 信
月曜3限。8講(総合研究2号館)
昨年度に引き続き、ハンナ・アレントの思想を手がかりに、公共性と道徳について考える。規範の基礎付けというような問題設定ではなく、道徳や政治といった規範との緊張のうちに生きる人間とはどういう存在なのか、という問題意識で考えていく。
途中、適宜アレントなどのテキスト(英語)を読む。テキストはこちらで用意する。
- 情動とその評価(大学院・学部共通)
- 講師 鈴木 真
集中講義。新1講
道徳と情動の関係について考えながら、情動とは何かという問に関する哲学理論と、情動の評価についての議論を概観し、理解を深める。
以下のような課題について検討する予定である(内容を状況に応じて変えるかもしれない)。
1.情動とは何かという問に関する主要な哲学理論
2.情動に関する経験的知見
3.諸々の情動に共通の本性はあるのか
4.情動、ムード、衝動、生理的反応
5.情動の対象、志向性、fittingness
6.情動の(諸)機能と、情動に関する様々な評価方法
7.道徳と情動:情動主義とその後(Williams' "Morality and the Emotions")
8.ギバードのプログラム
9.情動に関する認知主義に対する批判
10.マクダウェルとウィギンズの立場とその批判
11.ダームズとジェイコブソン:(1)情動の評価と道徳
12.ダームズとジェイコブソン:(2)Neosentimentalismの擁護
13.虚構に対する情動とその評価
14.道徳的情動、道徳的直観、エンパシー
*上に挙げたトッピクの代わりに扱うかもしれないものを下に記しておく
・責任に関するストローソンの反応的態度説
・情動に対する責任
・The comparative fittingness of emotions
・良心と情動
演習
- レヴィナスを読む(大学院・学部共通)
- 教授 佐藤 義之
金曜3限。吉田南1号館共204
レヴィナスは倫理の問題を手がかりに、旧来の哲学の根本的革新を企て、思想界に大きな影響を残した。授業では彼の第二の主著とされる1974年の『存在するとは別の仕方で、あるいは存在することの彼方へ』の仏語原文をテキストとして、彼の思想を理解する。
- 倫理学の諸問題(大学院・学部共通)
- 教授 水谷 雅彦
火曜4限。新7講
出席者が自分の研究内容について報告し、討論を行う。報告者は、発表の一週間前にレジュメを提出すること。他専修の参加も歓迎するが、倫理学専修の大学院生は必修。
- 応用倫理学演習(大学院・学部共通)
- 教授 水谷 雅彦
金曜4限。9講(総合研究2号館)
生命倫理・環境倫理・ビジネス倫理・工学倫理などの応用倫理学に関する諸問題を検討する。若干の予備的講義の後、毎週出席者による発表と討論を行う。他学部、倫理学専修以外の出席者も歓迎する。
- カント倫理学 演習(大学院・学部共通)
- 講師 北尾 宏之
金曜5限。新4演習
Kant:Kritik der praktischen Vernunftを、Von der Deduktion der Grundsaetze der reinen praktischen vernunft(純粋実践理性の原則の演繹について)の部分から精読する。毎時間、あらかじめ担当者を決めることなく、全員に訳読してもらい、解説を加える。進度は、毎時間1ページ〜1ページ半を予定しているが、受講者の語学力も勘案する。ドイツ語未習者については、英語訳の利用も可とする。必要に応じて、カントのその他の著作(たとえば『純粋理性批判』や『道徳形而上学の基礎づけ』など)にあたったりすることもあるが、まずは上記テキストを詳細に検討する。