2006年度 倫理学教室の授業内容
講義
- 倫理学概論
- 教授 水谷雅彦
金曜3限。新6講 (2回生履修可能)
前半においては、現代の倫理学理論のうち主要なものをいくつか選んで解説するとともに、あわせて哲学的な行為論やコミュニケーション論も考察する。後半では、いわゆる「応用倫理学」に属する問題群を、生命・環境・情報といったキーワードをもとに考察する。
特殊講義
- 健康の倫理学
- 教授 水谷雅彦
火曜3限。新3演(大学院・学部共通)
「健康」は何度目かのブームにあるといえるが、健康概念そのものは哲学的にも科学的にも明晰判明なものではない。しかし、曖昧なままに流布しているこの概念は、いまやある種の道徳的義務であるかのように語られることもある。本講義では、こうした状況を批判的に考察することを目的とする。具体的には、健康とそれに関わる科学の歴史的文化的考察を基盤として、公衆衛生学、疫学の科学哲学的考察、健康に関わる政治的法的な言説の倫理学的分析、現代の医療や情報、環境といった領域における新しい健康観への応用倫理学的考察などが考えられる。文献については、講義中に指示する。
- 集団的責任論
- 講師 江口聡
木曜5限。新4演(大学院・学部共通)
前年にひきつづき、集団的責任に関する現代的議論を検討する。
- Hans Jonasの将来世代への責任論
- 国内の「応答」責任論
- Peter Frenchの集団類型論
- Larry Mayの社会実存主義
- Karl Jaspersの形而上学的罪責論
- Anthony Appiahの道徳的汚点論
- Gregory Mel Lemaの倫理的希釈主義批判
- 現代世界と正義
- 講師 井上達夫
集中講義。(大学院・学部共通)
現代世界において正義はそれを蹂躙するものによって振りかざされ、それを必要とするものによって、唾棄されている。本講義では、正義に対する様々な歪曲・懐疑・批判からこの理念を救済擁護するとともに、多元的社会における正義理念の基底的位置を見極め、自由ではなく正義を基底に再編されたリベラリズムが現代思想・現代世界の隘路をいかに打開しうるかを考察する。
演習
- Totalite et infini
- 助教授 佐藤義之
金曜3限。総人1103 (大学院・学部共通)
E. Levinasは彼の最初の主著Totalite et infini (1961)において彼の思想の基盤を確立したといえる。この著作の中から、彼の思想の核心に触れる箇所を抜粋して読む。
- 倫理学の諸問題
- 教授 水谷雅彦
火曜4限。新6講(大学院・学部共通)
出席者が自分のテーマについて報告し、全員で議論する。研究室所属の大学院生全員と卒業論文執筆予定者は報告必須。また3回生、他専修の聴講、単位取得を排除するものではない。報告者は、担当日の一週間前に発表原稿、レジュメなどを提出のこと。
- 応用倫理学演習
- 教授 水谷雅彦
金曜4限。新6講 (大学院・学部共通)
生命倫理、環境倫理、ビジネス倫理、工学倫理といった応用倫理学の諸領域における個別問題について出席者が提題し、議論する。数回の概説的講義と模範発表の後、出席者が重要であると考えるテーマを選んで報告する。最低一回の発表は義務であるが、毎回の討論に積極的に参加することが強く要請される。
- 「倫理性」概念のメタ倫理学的考察
- 講師 安彦一恵
金曜5限。東9演 (大学院・学部共通)
1)何であれ優先する(overriding)とみなされるものを遂行している状態を「基底的倫理性」と呼ぶとして、この基底レヴェル(それは人間論的レヴェルとも換言可能である)を確認し、2)これに対するいわば派生的レヴェルで語られる「倫理性」―通常の意味での倫理性はこのレヴェルのものである―には様々な形態があることを明示化しつつ、その諸倫理性の類型化を行い、3)その妥当性を批判的に検討しつつ、4)規範的対立が、―倫理性vs.非-倫理性の対立ではなく―倫理性の諸類型間の対立であることを明示化する。具体的には、基本的な諸文献のエッセンス的部分の購読を通して、この作業を行う。